かわかみ建築設計室

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その6 民家はプレハブだった。


木造の民家はしっかり出来ている。

その木組には金物や接着剤をほとんど使わず、木と木を隙間なく組み合わせ、丈夫に造られている。

木と木を平行に繋いだ姿を継ぎ手といい、角度を変えて繋いだものを仕口というが、
継ぎ手や仕口の形や組み合わせは限りなく多く精緻だ。


一度取り外した木口を観るとその素晴らしさにまいってしまう。
組み立てれば一見シンプルだが、大変な技が隠されている。
シンプルな姿ゆえ取り外しもまた簡単だ。

何故か?。その材と技をもっていつでも何度でも移築が可能な様に造られていたからだ。

まず『刻み』という高度な木材加工は丁寧に加工場でなされ、
現場ではそれを数日で組み上げるだけだった。

木材は何度でも組み直した上に建具や畳なども大切に再利用された。

壁土はというと、解体時にはその場で畑に戻し、新たな土は近くの畑からを掘ってその場で調達し、熟練した近くの職人が丁寧に塗りあげた。



民家再生の相談でお話を聞くと、当時はお金がなくて古い建物を買って造ったと恥ずかしそうに言うが、実は新築より価値があると見て自慢して移築したものなのだ。

全てが本物の材料を使ったリサイクルの建築システムだった。
言うなればホンモノのプレハブ工法である。


改めて木材だけを考えると当時はその8割ほどが再利用できた。
古民家は100年は使われ続けているのに、果たして最近の建物はそこまで持つか・・?。
昨今は確かに基礎は強くなったが上物が持たない。もったとしてもそもそも建物に魅力を感じなくて大切にする気になれない。

現代人は世代が替わると愛すべき故郷を去って新天地に暮らそうとする傾向だ。当然家を守ろうとは思わない。その結果建物は消滅することになり、粗大ゴミだけを増やすことになる。

意外かもしれないが外国は違う。
モノも歴史も自然も大切にしていて、今の日本の発展という現実に首を傾げている。


今後もこのプレハブシステムを進めるならば、一度造った『民家』は少なくとも半世紀は使い続けて欲しい。
かつての日本人のお家芸であることを想い返して欲しい。


川上

継手・仕口
金輪継ぎ


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松岡フラスコ
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